LumiRankはなぜ一年間のランキングを発表することを諦めたのか

LumiRankから2024年の発表から半年ごとの発表となり、通年の発表を取りやめるそうです。

なぜこのような決定になったのかをSmash Banzukeという日本ランキング制作に携わっている私から推測込みの解説をします。

LumiRank2023における課題事例

luminosity.gg

まず前回のLumiRank2023の発表において大きく2つの問題がありました。

ここでは事例紹介のために具体的な選手名を踏まえてご紹介させていただきます。

HIKARU選手

まずは日本のHIKARU選手です。

HIKARU選手は2023年後半はストリートファイターVIに注力するため、スマブラSPの大会にはほとんど出場しませんでした。

特に2023年のLumiRankにはJAPAN24が開催された2022年最終週を含んでおり、HIKARU選手の画像に記載されている3大会はすべて2023年2月以前の大会でした。

現代のスマブラシーンは大会数が非常に多いため、2023年3月以降の結果がないことは直近の大会に対する親近効果も働いて直感から外れてしまいます。

期間を半年に区切ることで現在の大会数でも直感から外れないほどの古さの大会までに絞ることができます。

AlanDiss選手

二人目はAlanDiss選手です*1

AlanDiss選手はメキシコ在住のスネーク使いで、現地では以前から名の知られた存在でした。

その強さ自体に異論がある人は少ないのですが、この大会数の少なさで上位に正式ランクインすることに対する意見が噴出しました。

とりわけ話題となったのが、同じメキシコ在住のChag選手との比較です。

https://smashdata.gg/smash/ultimate/player/Chag?online=False

Chag選手はUAE、フランス、カナダ、そしてもちろんアメリカ合衆国と世界各地の大会を飛び回ったものの残念ながら150位ランク外となりました。

そのため、メキシコにとどまりメキシコの上位選手にしか負けなかったほうがランキングが高くなったのではないかと言われているのです。

今回の変更で対象期間を半年にし、ある程度の頻度での(半年で1メジャー大会を含む4大会)出場を求めることで、ランキングを重視する選手にとってはどの大会に出場すべきかを自分でコントロールしやすくしたいのだと考えられます。

集計期間を短くすることのデメリット

では集計期間が半年間に短くなることによるデメリットはないのでしょうか。

そもそも私は集計期間は一年間のままがいいと考えています。

ランキングとしての信頼性

私はSmash Banzukeの作成にも携わっているのですが、同様の半年間のランキングで発表するのはどうかという議論がありました。

しかし、実際にデータを細かく見ると、半年間の結果だけでは十分なデータがないため、上振れ・下振れの影響が大きくて納得できるランキングにならないという問題がありました。

そのため、BanzukeではSeason2 Midとして発表することになりました。

LumiRankにおいても半年間でのランキングが続くと、順位の変動が大きくなって信頼性あるランキングにしていくのが難しくなるのではないかと考えています。

特別賞の増加

また、LumiRankでは大会出場数が少ない選手は特別賞(Honorable Mention)扱いとなります。

luminosity.gg

正式ランキングに載るための厳しい基準を導入することにより、特別賞扱いの選手が増えることが予想されます。

ランキングはシーンに詳しくない方に見方を提供するものなので、できるだけ正式ランキングとして評価されることが望ましいです。

スマブラSPはその特性から専業ではなく学生・社会人選手も多く、どうしても高い大会出場回数を維持することが難しいです。

例えば、受験勉強のために今年の夏休み(8月)から半年間は選手活動を休止すると、おそらく2024下期のランキングには載らず、2025上期に急に高い結果を残すことなどが起こり得ます。

まとめ

以上のようなことから私は半年間の世界ランキングには反対です。

しかし、ランキングはシーンに合わせて変わっていくことが求められるため、この変更も一時的なものなのかもしれません。

個人的には半年間のランキングで運用するならば、シーズン間の順位変動の大きさや特別賞となる選手の割合などを注視して、必要大会数などを随時調整していってほしいです。

*1:この二人はたまたま隣の順位に並んでいて面白いですね